膣カンジダの再発は市販薬で自己治療が可能になりました

真菌(カビ)の一種であるカンジダを原因とする性病「膣カンジダ症」は、薬で治療をしても再発しやすいのが特徴です。外陰部の炎症を併発することが少なくないため、「外陰膣カンジダ症」と呼ばれることもあります。

カンジダ菌は健康な女性でも膣をはじめ、皮膚や口中、消化管に存在しており、仕事のストレスやホルモンバランスの乱れ、風邪による免疫力の低下などによって増殖し、発症します。

女性の約5人に1人が経験するポピュラーな病気で、デリケートゾーンの我慢できないかゆみ、ボロボロとした白いおりものが出る、おりものの量が増えるといった不快な症状が現れます。

従来は再発のたびに医師の診察を受けて、治療薬を処方してもらわなければならず、病院へ行く時間的な手間だけでなく、薬代以外にも診察料や検査料、薬の処方料などが加算されるのがネックとなっていました。

しかし、「スイッチOTC薬」の登場により、過去に病院で膣カンジダ症と診断され、治療を受けたことがある患者さんの再発に限り、薬局で治療薬が購入できるようになりました。

OTCとは「Over The Counter(カウンター越し)」の略語で、「薬局のカウンター越し」に購入できる一般用医薬品を意味しています。そして、これまで医師の処方箋でしか使用できなかった医療用医薬品を、薬局やドラッグストアで買えるようにしたのが「スイッチOTC薬」です。

スイッチOTC薬は医療用でのみ使用が認められている成分のなかで、副作用が比較的少なく、かつ安全性の高い成分について、一般薬への配合を許可したものです。

薬局やドラッグストアで購入することができる膣カンジダ症の治療薬としては、フェミニーナ膣カンジダ錠(小林製薬)、オキナゾール(田辺三菱製薬)、メディトリート(大正製薬)、メンソレータムフレディCC膣錠(ロート製薬)、エンペシドL(佐藤製薬)などがあります。

フェミニーナ膣カンジダ錠(小林製薬)
購入には薬剤師の指導が必要

有効成分オキシコナゾール硝酸塩を配合した膣錠が膣内に留まることで、激しいかゆみ、灼熱感、おりものの増加などの不快な症状を和らげます。

オキナゾール L100(田辺三菱製薬)
カンジダ・グラブラタにも有効

オキシコナゾール硝酸塩による殺菌作用でカンジダ菌の細胞膜を破壊し、腟内の異常だけでなく、外陰部のかゆみ・腫れも改善します。

従来の抗真菌薬に対して耐性を示す(薬が効きにくい)ことがあるカンジダ・グラブラタと呼ばれる菌にも効果があります。

メディトリート(大正製薬)
膣座薬を挿入します

カンジダ菌の増殖を抑えるミコナゾール硝酸塩を有効成分とする膣錠です。膣だけでなく外陰部にも炎症が広がっている場合は、メディトリートクリーム(外陰用クリーム)と併用することで症状を和らげます。

メンソレータムフレディCC膣錠(ロート製薬)
膣のかゆみを治療

カンジダによる膣の炎症を抑えるイソコナゾール硝酸塩を有効成分として配合した膣錠です。外陰部の炎症によるかゆみ等の症状に対する「メンソレータムフレディCCクリーム」も市販されています。

エンペシドL(佐藤製薬)
エンペシド

カンジダ菌に対して優れた抗真菌作用を持つクロトリマゾールを配合した膣錠です。膣内で発泡しながら崩壊するので、腟のすみずみまで成分が行きわたります。

これらの再発治療薬にはカンジダ菌に殺菌作用を示す抗真菌薬が配合されており、使用後2~3日でかゆみやおりもののなどの自覚症状が軽減します。なお、いずれの薬も購入の際には、薬局の薬剤師による情報提供(副作用や使用上の注意など)を受けることが必要です。

デリケートゾーンのかゆみ、おりものの性状の変化を主な症状とする性病は膣カンジダ症以外にも、トリコモナス膣炎淋病、炎症性腟炎などがあるため、以前に膣カンジダ症の診断を受けたことがない方は、自己判断で治療薬を購入してはいけません。必ず婦人科または性病科を受診しましょう。

また、スイッチOTC薬を3日間使用しても自覚症状が軽減されない場合、あるいは6日間使用しても症状が残っている場合、頻繁に発症を繰り返す場合には、他の病気、薬剤に対する過敏症、薬剤が効きにくい耐性菌である可能性が考えられます。

この場合、婦人科で医師の診察を受け、治療に適切な薬剤を選択しなおす必要があるので、自己判断での治療を漫然としないで、必ず医療機関を受診するようにしましょう。

また、膣に挿入するタイプの膣錠は生理中に使用することはできません。薬剤が経血と一緒に流れ出てしまい、薬剤の本来の作用が弱くなってしまうためです。

再発した膣カンジダを市販薬で治療している期間中に生理がきた場合も、同様の理由で治療を中止し、医師の診療を受けて治療経過などを確認してもらう必要があります。