妊娠中の性器ヘルペスは早産や流産を引き起こす危険性

単純ヘルペスウイルスに感染することで、口唇や性器に痛みを伴うオデキができる病気です。性病としては、クラミジア淋病に次いで多くみられます。いったんウイルスに感染すると、治ったあとも体内に潜伏して、体力が低下したときや月経時に再発を繰り返すという特徴があります。

再発に悩む女性

セックスで感染しますが、口の周囲に水ぶくれや潰瘍があるときにオーラルセックスをすると、口から性器に感染します。また、その逆のパターンもあります。

症状としては、初感染の場合、約1週間の潜伏期間の後、外陰部などに水泡や潰瘍(ただれ)ができて、強い痛みが起こります

性器ヘルペスは知覚神経にできるので、下着がちょっと触れるだけでも激痛を感じたり、排尿や歩行に支障をきたすこともあるため、入院して抗ウイルス剤による点滴治療が必要なケースもあります。2回目以降の再発では、水泡や潰瘍の数も少なく、比較的軽い症状ですみます。

性器ヘルペスが怖いのは、ウイルスは生涯にわたって体の中に潜伏するため、身体の免疫力が低下すると、皮膚や粘膜にピリピリした痛みを伴うオデキの再発を繰り返して、感染者を苦しめ続けるということです。そのために、年代別の患者数にはほとんど差がありません。

クラミジア感染症や梅毒などの多くの性病は、仮に症状が強く現れたとしても最終的には抗生剤で根治できるため、苦痛の持続時間も限られているのに対し、性器ヘルペスは、ウイルスの潜伏と再発という活動によって患者さんを長期間苦しめることになるのです。

胎児の感染リスク

特に妊娠中に感染したり再発した場合、流産や早産を引き起こす危険性があるうえ、出産のときに発症していれば、産道感染を起こして赤ちゃんが新生児ヘルペスにかかる可能性が高く、その死亡率は80%~となっています。そのため、妊娠中に感染したら帝王切開となります。

性器ヘルペスは抗ウイルス剤(バラシクロビル、アシクロビル)と軟膏の治療によって症状を和らげることができますが、現在のところ、潜伏したウイルスを完全に駆除することはできません。

1年以内の再発率は80%と非常に高いので、一度感染した人は、十分な睡眠時間の確保、バランスのとれた食生活、体を冷やさないように心掛けるなど、日頃から体力を低下させない注意が必要です。

性器ヘルペスのなかには痛みなどの自覚症状がない無症候性のものもあり、問題となっています。すなわち、こうした無症候性のヘルペスの場合、自分が病気に感染したことを知らないまま、セックスでパートナーに病気を移してしまうことになるからです。実際に感染源と考えられるセックスのパートナーの約70%は無症候とされており、症状の自覚がないからこそ性器ヘルペスを移しやすいのです。