妊娠・出産の機会が多い20~30代に発症する尖圭コンジローム

外陰部や子宮頚部、肛門の周囲などに薄茶色のカリフラワーの形をした小さなブツブツ(イボ)ができ、放置しているとどんどん広がる病気です。妊娠・出産の機会が多い20~30代によく発症します。出産時にブツブツができていると、赤ちゃんに産道感染することがありますので、妊娠時は出産までに完全に治しておくことが大切です。

尖圭コンジロームはセックスを通じて、原因病原体であるヒトパピローマウイルス(HPV)に感染するのが原因です。極まれに舌や唇・咽頭などの口にも感染することがあります。

このウイルスはタイプによっては、子宮頸がんの発生に深く関係しているので、一つでもブツブツに気づいたら、婦人科で子宮頸がんの検査を受けるようにしましょう。

この病気も性器ヘルペスと同様に一度感染してしまうとウイルスのキャリア(保菌者)となって、何度も再発することが多いのが大きな特徴です。そして、疲労やストレスが溜まって抵抗力(免疫)が落ちたときなどに再発しやすくなります。

ただし、尖圭コンジロームのようなウイルス感染症では、感染してもウイルスに対して抵抗力があれば発病しないこともあります。また、発病までの潜伏期間が数ヶ月から数年に及ぶことも少なくないため、いつどのような経路で感染したのかが把握できないこともあります。

この病気は、自然に治ることもありますが、治療には電気凝固、外科的切除、冷凍療法、レーザー療法、軟膏の塗布などを行います。いずれにしてもブツブツがすべてとれるまでには時間と根気が必要ですが、あきらめずに治療を続けることが肝心です。

外陰部や肛門周辺の病変に限定されますが、原因となるヒトパピローマウイルスの増殖を抑えるイミキモド(商品名:ベセルナクリーム5%)という軟膏による治療は、週3回の使用で効果も高いうえ、他の外科的処置に比べて患者さんの負担も小さくなっています。

治療を受けた時点で既に他の部位に感染している場合も考えられますので、数週間の間隔で繰り返して治療を行い、治療を終えて三ヶ月間は再発しないかどうかチェックすることが必要とされています。

セックスは、パートナーがコンドームを正しく使用していても、ブツブツが完全になくなるまでは禁止です。ペニス以外の部分に接触して、パートナーにも感染させてしまうからです。

性病の診断に慣れた医師は、通常のブツブツとは形状やサイズ、色が違う、あるいは治りの悪さから尖圭コンジロームであると見分けることができますが、不慣れな医師の場合には誤診が少なくありません。

婦人科の代表的な誤診としては性病でも感染症でもない「膣前庭乳頭症」という生理的な現象、男性の場合では、脂肪の粒である「フォアダイス」などの生理的な現象を尖圭コンジロームと取り違えてしまい、本来は必要のない治療薬等を投与されてしまうことがあります。